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福島地方裁判所白河支部 昭和56年(ワ)157号 判決 1985年10月23日

原告 古市滝之助

被告 国

代理人 浦野正幸 菅谷久男 林勘市 佐々木運悦 福島昭夫 二瓶誠慈 ほか六名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金二四四五万九五九一円及びこれに対する昭和五七年一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員、並びに昭和五六年一二月二七日から本判決確定に至るまで月額金六三六万四〇八二円の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、福島県東白川郡矢祭町大字中石井字小野沢一〇番地を販売場として、所轄の白河税務署長から酒税法(以下単に「法」ということがある。)九条一項の免許を受けて酒類の販売業を営んでいる者であるが、次の各税務署収税官吏は、それぞれ、別紙(一)取引目録記載の各酒類取引(以下「本件取引」と総称する。)につき、原告が免許を受けていない税務署長所轄地区の別紙(二)差押酒類目録記載の各場所において酒類を販売した前記法条違反の嫌疑があるとして、国税犯則取締法二条に基づき、次の年月日に、右差押酒類目録記載のとおり、捜索し、原告所有の各酒類を差押えた(以下「本件各捜索・差押」という。)。

(一) 水戸税務署収税官吏根本博雄らの捜索・差押

(1) 昭和五六年九月二九日(別紙(二)差押酒類目録1の(1))

(2) 昭和五六年一一月二七日(同目録1の(2))

(二) 松戸税務署収税官吏田中敏英らの捜索・差押

(1) 昭和五六年九月二九日(同目録2の(1))

(2) 昭和五六年一一月二七日(同目録2の(2))

(三) 川口税務署収税官吏持田茂らの捜索・差押

昭和五六年一一月二七日(同目録3)

(四) 保土ヶ谷税務署収税官吏蓮見進弘らの捜索・差押

昭和五六年一一月二七日(同目録4)

2  しかし、本件取引は、以下のとおりの仕組みによるいわゆる「ボトルカード方式」と言われるものであつて、原告は本件各捜索・差押場所において酒類の販売を行つたわけではなく、当該酒類の販売はあくまでも原告が免許を受けている前記福島県東白川郡矢祭町の販売所において行つたものであり、本件取引に前記法条違反の事実はないのであるから、本件各捜索・差押は違法である。すなわち、

(一) 訴外角田酒販株式会社(以下「角田酒販」という。)は、本件各捜索・差押場所において、顧客に対し次の(二)記載の申込証(ボトルカード)(以下「本件カード」という。)を販売し、その代金を受領する。

(二) 本件カードの形式と内容は、別紙(三)「本件ボトルカードの形式と内容」記載のとおりである。すなわち、その表面に、「申込証」の標題及び「ボトルカード」の副題が付され、酒類の銘柄・等級・数量等が表示され、原告が申込みの名宛人となり、特約店として角田酒販が記載されている。その裏面に、<1>右カードを原告商店又はその代理店に提示して表記の商品と引換えができること、<2>入手を急ぐ者は右各店の専用配送車に右カードを提示して右商品と引換えができること、<3>右カードを専用配送車に提示した場合は配達料がいらず、その他の場合は配達料の実費がいること、<4>右カードを受領する際に支払つた代金は返還しないこと、等が記載されている。なお、別紙(一)取引目録一2、二2、三、四の各取引において使用された本件カードには右各記載内容のほかに申込人の住所・氏名及び電話番号欄が加えられている。

(三) 本件カードを販売した角田酒販は、右カード販売時に当該販売場所(以下「カード販売所」という。)から、原告が免許を受けている前記福島県東白川郡矢祭町の販売場に直接電話で顧客名簿(顧客名、酒類の銘柄、数量、届出日時・場所)を連絡する。

(四) 原告は、右連絡に従い、顧客届出の日時・場所に顧客宛原告の専用配送車で酒類を配送する。緊急の場合には、顧客が直接右専用配送車に本件カードを提示して酒類の引渡しを受けることができる。

(五) 角田酒販は、本件カード販売代金のうち一五パーセントを販売手数料として取得し、残りの八五パーセントを原告に酒類代金として交付する。そして、本件カード販売業務に伴う人件費その他の経費は角田酒販が負担し、酒類の販売価格は原告が決定し、その配送業務は原告の経費ですべて行う。

(六) 要するに、角田酒販は直接酒類の販売に関与せず、本件の各カード販売所においてボトルカードという「証券」を販売しているにすぎず、一方、原告は、免許を受けている前記販売場において角田酒販から顧客名簿の連絡を受けたうえで専用配送車で顧客宛直接配達し、角田酒販より本件カード販売代金から販売手数料を差引いた残余を酒類代金として受領するのであるから、本件取引における酒類の販売は、原告が免許を受けている前記販売場において行つているにほかならないのである。

3  また、酒類販売業免許制を定める法九条、一〇条の規定は、以下のとおり、職業選択の自由を保障する憲法二二条一項に違反し無効であり、右無効な法条に違反したことを理由とする本件各捜索・差押は違法である。

(一) 合憲性判定の基準・要件

(1) 憲法二二条一項が保障するところの「職業選択の自由」(以下「職業の自由」という。)とは、狭義における職業選択(職業の開始・継続・廃止)の自由のみならず、選択した職業の遂行(職業活動の内容・態様)においての自由を包含するとされている。法九条、一〇条に規定されている営業の許可制(以下総称して「酒類販売業免許制」という。)は、右にいう職業活動における自由に対する制約にとどまらず、狭義における職業選択の自由そのものに対する制約を課する最も徹底した強力な規制にほかならない。しかして、これを合憲と認めるためには、右制度自体強い正当性のある合理的根拠が存在しなければならない。

職業の自由には、それ自体に、公共の福祉による制約の必要性が内在すると解されている。しかし、それに対する規制を要請する社会的理由・目的も千差万別で、重要性も区々にわたる。しかして「これら規制措置が憲法二二条一項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的・必要性・内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない」(最判昭和五〇年四月三〇日民集二九巻四号五七二頁、いわゆる薬事法薬局距離制限の違憲判決)とされる。

(2) 職業の自由に対する制約は、以上のことから、類型として規制目的によつて分類され、社会公共に対する危険の防止といつた消極的・警察的目的のための規制と、中小企業の保護といつた社会・経済政策的目的のための積極的規制とに大別される。そして、右分類に従つて、その規制の合憲性判定の基準が異なると説かれている。

前者の消極的・警察的規制の合憲性判定の基準は、(ア)規制の目的に公共の利益に適する合理性・正当性の存在すること、(イ)規制目的と規制手段との合理的関連性の存在、(ウ)規制することにより得られる利益と、規制することにより失われる利益との均衡、という三要件が必要と解される(前記薬事法違憲判決)。

後者の社会・経済政策的な積極的規制については、前記(ア)の規制目的自体に公共の利益に適する合理性・正当性が存在することは、当然のことながら、合憲性判定の第一の要件となろう。そして、第二の要件は、規制の手段・態様が著しく不合理であることが明白であると認められないことである(小売商業調整特別措置法による小売市場許可制合憲判決(最判昭和四七年一一月二二日刑事二六巻九号八六頁)。ただ、右第二の要件の判断は、いわば総合的判断であるから、前記した(イ)の規制目的と規制手段との合理的関連性の有無、(ウ)の利益の均衡の成否は、右要件を判断する際に考慮されるべき重要な一具体的要素と解されるであろう。

(3) さて、酒税法の立法目的は、「酒税の保全」(法一〇条一一号、一一条)、すなわち酒税収入の確保を図ることである。これは国家財政の目的であるから、同法に基づく酒類販売業免許制は、右の経済政策的な積極的規制の類型ということになろう。しからばその合憲性判定の基準(要件)は、前述したとおり、第一に、規制目的自体に公共の利益に適する合理性・正当性が存在すること、第二に、規制の手段・態様が著しく不合理であることが明白であると認められないことである。

以下、右の要件に基づいて、本件の酒類販売業免許制が違憲であることを論証する。

(二) 規制目的における合理性・正当性の欠如

(1) 酒類販売業免許制の目的は、前述したように、酒税収入の確保というものであるが、そもそも、そのような「租税政策」的目的が、規制目的として公共の利益に適する合理性・正当性を具備しているかということが根本的に問題である。

政策的・積極的規制における右公共の利益に適する合理性・正当性とは、換言すると、その規制目的が「経済的弱者の保護ないしいわゆる社会権の実現のためのものであること」である。けだし、憲法は、職業の自由、財産権(二九条)に対しては、特に「公共の福祉」により制限されることを明記しているが、これは、第一に、これら経済的自由がとりわけ二〇世紀に入つてから、経済的弱者の保護のために制約を受けるべきものとされてきたという資本主義憲法史における一定の発展を踏まえた規定と理解されること、第二に、憲法は、いわゆる社会権を基本的人権として保障していることから、経済的自由に対する政策的・積極的規制が「公共の福祉」として許されるためには、右目的が、経済的弱者保護ないし社会権の実現のためでなければならないわけである。

(2) しかるとき、酒類販売業免許制の酒税収入確保という目的は、右にいう経済的弱者保護ないし社会権の実現のいずれにも該当しない。したがつて、その規制目的自体何ら合理性・正当性を有していないというほかない。

そもそも、酒税収入確保という「租税政策」的目的は、「公共の福祉」というより政府の便宜を優先させたところの恣意的制約であつて、憲法で保障された基本的人権たる職業(営業)の自由に対する規制原理には到底なり得ないものである。

仮にこのように租税徴収確保という目的のため営業許可制が設けることに合理性・正当性があるというならば、そもそも、国民の経済活動のほとんどすべての領域が徴税対象とされている現代社会においては、国民が従事するほとんどすべての職業(営業)に許可制を採用できる筋合となる。これでは、国民の職業の自由が、国家の恣意的・便宜的政策により、いかようにでも左右されることとなり、憲法二二条一項の保障は全くの空文に等しくなるだけでなく、憲法の基盤である自由競争経済の原理は崩壊する。

右の点からしても、酒類販売業免許制の目的に公共の利益に適する合理性・正当性は何ら存在しない。

(3) 以上に述べたことから既に明らかのように、本要件が欠如している酒類販売業免許制は、前記第二の要件について論ずるまでもなく、憲法二二条一項に違反して無効である。

(三) 規制の手段・態様が著しく不合理であることの明白性

更に、酒類販売業免許制についての前記第二の要件の具備の点を検討してみても、次に述べるとおり同要件を何ら充足しない。すなわち、その規制の手段・態様が著しく不合理であることが明白である。

(1) まず、法六条によれば、酒税納税義務者は、酒類製造者(一項)又は酒類を保税地域から引き取る者(二項)であつて、酒類販売業者ではない。しかして、仮に酒税収入の確保のための営業免許制を(それに合理性・正当性があると仮定した上で)設けるとするなら、右の酒類製造者又は酒類引取者を免許制とすることで十分足りるわけで、これに反して、納税義務者でない酒類販売業者を、右目的のために免許制とすることは、それ自体著しく不合理である。

(2) 更に述べると、法は、酒税徴収を確保するために、まず酒類製造業者に対して、申告書提出義務(三〇条の二)、各種事項の帳簿記載義務(四六条)、申告義務(四七条)、質問検査・検定受認義務(四九条、五三条)、承認を受ける義務(五〇条)、届出義務(五〇条の二)、酒税証紙貼付義務(五一条)を課し、その懈怠に対しては刑事罰をも規定(五四条以下)することによつて課税対象及び税額の把握に遺漏なきを期している。更に納税の担保の確保として、三一条一項には、国税庁長官、国税局長又は税務署長は、酒税の保全のため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより酒類製造業者に対し、金額及び期間を指定し、酒税につき担保の提供を命ずることができ、提供すべき担保がないときには、担保の提供に代え、酒税の担保として酒類の保存をも命ずることができる旨規定されており、これを受けて、同法施行令及び国税庁基本通達は、担保提供を命じ得る条件・期間・担保物件の種類・物件評価の詳細について定めている。しかも、酒税は、酒類製造業者がその製造場から酒類を移出した月の翌々月末日までに納付しなければならないものとされていて(三〇条の四第一項、三〇条の二第一項)、極めて短期の納期限が定められ、酒類製造業者の資産・信用等の変化による酒税徴収への影響を受けないように配慮されている。

このように、法並びにこれに基づく命令及び国税庁基本通達は、納税義務者たる酒類製造業者らから酒税徴収を確保するために、二重、三重にわたる万全の方策を講じている。

しからば、右方策に加えて、酒税収入の確保という名目のもとに、酒税納税義務者でもない酒類販売業者に対してまでも免許制の規制を加えることは、いわば屋上に屋を重ねるところの全く無用の措置と言うべきであつて、その手段・態様は、著しく合理性を欠くことが明白である。

(3) なお、むしろ逆に、酒類販売業の自由競争を認めれば、その活発な販売競争によつて販売量が増大し、結果的に酒税徴収額も増大することは経験則上明らかである。

4  前記1記載の各収税官吏はいずれも国家公務員であり、本件各捜索・差押はその職務として行われた。

5  原告は本件各捜索・差押によつて次の損害を受けた。

(一) 積極的損害

原告はその所有に係る本件差押酒類につき、別紙(二)差押酒類目録記載の各酒類の価額相当の損害を蒙つた。

(1) 水戸税務署分   四一九万九三五〇円

(2) 松戸税務署分   二二〇万七〇二九円

(3) 川口税務署分   一四一万七五八二円

(4) 保土ヶ谷税務署分  二七万一五四八円

合計       八〇九万五五〇九円

(二) 逸失利益

原告は、本件各捜索・差押の結果、長期間継続していく予定であつたその営業継続が不可能となつた。しかして、別紙(四)逸失利益計算一覧表記載のとおり、本件各捜索・差押場所について、一日の純利益に一か月の稼働日数二五日を乗じて月額純利益を算定すると次のとおりとなる。

(場所)        (一日の純利益)  (一か月の純利益)

(1) 水戸税務署分    八万九八三一円  二二四万五七七五円

(2) 松戸税務署分    四万三〇〇六円  一〇七万五一五三円

(3) 川口税務署分    一万九四五九円   四八万六四八〇円

(4) 保土ヶ谷税務署分 一〇万二二六六円  二五五万六六七四円

月額合計  六三六万四〇八二円

したがつて、原告は、本訴判決確定に至るまで月額金六三六万四〇八二円の割合による損害を蒙ることとなつた。

(三) 慰藉料

原告は、前記収税官吏らによる度重なる違法な捜索・差押によつて右損害を蒙るなど、その物心両面での苦痛は甚大なものである。しかして、原告の受けた右精神的苦痛を慰藉するための金額としては一〇〇〇万円を下らない。

6  よつて、原告は被告に対し、国家賠償法一条一項に基づき、右損害のうち、既発生の損害については、その合計二四四五万九五九一円及びこれに対する不法行為日の後である昭和五七年一月一〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を、並びに、右損害のうち逸失利益については、本件各捜索・差押のうち二回目の捜索・差押のなされた日である昭和五六年一一月二七日の一か月後である同年一二月二七日以降本判決確定に至るまで一か月六三六万四〇八二円の割合による損害金の支払を求める。

二  請求の原因に対する答弁

1  請求の原因1の事実は、別紙(二)差押酒類目録に記載の各酒類の価額は不知、その余は認める。同2の事実は、本件カードの形式・内容が同2(二)記載のとおりであることは認め、その余は争う。

原告は本件各捜索・差押場所において酒類の販売を行つたのであつて、本件各捜索・差押に何ら違法はない。その理由は以下のとおりである。

(一) 本件取引の具体的態様には、次のような数種類の形態のものがある。

<1> プレハブ建物やテント内において、顧客が酒類を注文して代金と引換えに係員から本件カードを受け取り、その脇あるいは近所に駐車中のトラツクの傍らへ行つて酒類を受け取る方法(水戸税務署、松戸税務署の各昭和五六年九月二九日差押及び保土ヶ谷税務署の昭和五六年一一月二七日差押関係)

<2> プレハブ建物やテントにおいて、顧客が酒類を注文して代金と引換えに本件カードを受け取り、酒類は一両日中に同所から顧客の住所に配達する方法(水戸税務署、松戸税務署、川口税務署、保土ヶ谷税務署の各昭和五六年一一月二七日差押関係)

<3> プレハブ建物やテントにおいて、顧客に、本件カードを発行せず、代金と引換えに酒類を渡す方法(水戸税務署、松戸税務署、川口税務署の各昭和五六年一一月二七日差押関係)

<4> プレハブ建物やテントにおいて、顧客から電話注文を受け、本件カードを発行せず同所から酒類を配達してその際代金を受け取る方法(松戸税務署、川口税務署、保土ヶ谷税務署の各昭和五六年一一月二七日差押関係)

<5> 前記<1>、<2>と同様であるが、本件カードを発行しない方法(保土ヶ谷税務署の昭和五六年一一月二七日差押関係)

なお、右の<3>ないし<5>の本件カードを発行しない取引形態のうち、<4>の電話注文によるものが相当数にのぼる。

右のような本件取引において、各カード販売所の脇あるいは近所に駐車中のトラツクは原告の専用配送車であつて、そこに積載された酒類及び各カード販売所に置いてあつた酒類は原告の所有である。

(二) 原告は、本件取引に先立つて配布した新聞折込みチラシの文案作成及びその印刷の発注、新聞折込みの依頼並びに本件カードの考案等をすべて自らなしており、取引の具体的方法について係員に指示をするなどして、それを計画、実行したのであつて、顧客からの酒類の受注や本件カードの発行をなしていた主体はもつぱら原告である。

また、角田酒販の販売手数料については何らの取決めもなされておらず、各顧客が支払つた代金は全額そのまま原告の収入となつたと認められる。

(三) 本件カードは、次の各点に照らすと、財産的価値を有する私権を表章する証券とは言えないし、権利の発生・移転・行使の全部又は一部が証券によつてなされることを要するものでないことは明らかである。

(1) 本件カードは、プレハブ建物やテントに赴いた顧客に対して、発行する場合もあれば発行しない場合もあつて取扱いが定まつておらず、形式が途中から記名式に変更され、指図文句も記載がないことからして本来流通することが予定されていないものと認められる。

(2) 本件カードの呈示による権利の行使がないにもかかわらず原告は注文に係る酒類を配達している。

(3) 顧客に対して酒類の引渡しがなされる際も本件カードの回収は必ずしもなされていない。

(4) 顧客に代金と引換えに発行する際、本件カードの表面に代金を受領した旨の表示がなされていた。

右の本件取引における本件カードの利用のされ方、その様式及び使用形態からして、本件カードを有価証券と認めることは到底できず、酒類の交付又は配達の利便のために作成された整理券的なもの、あるいは、酒類販売契約の成立もしくは酒類代金の弁済の事実を証明するための単なる証拠証券にすぎないものと言わざるを得ない。

(四) 継続的に酒類販売の契約の締結を行う場所が法九条一項にいう「販売場」に当たることは当然であるが、「販売場」とはそれにとどまるものではなく、後記のとおり、酒類販売業免許制の目的が酒税の保全にあり、酒類販売業者はいわば酒税の間接的な徴収機関と言える重要な地位にあること、及び取締上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合又は酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合等には免許を与えないことができるとされていること(法一〇条九・一一号)にかんがみれば、酒類販売代金の受領及びそれと反対給付の関係に立つ酒類の現物の引渡しも、「販売場」の解釈の上で極めて重要な要素として着目すべきである。

すなわち、「販売場」とは、酒類の販売契約の締結を継続的に行う特定の場所又は酒類の販売代金の受領及び酒類の現物の引渡しを継続的に行う特定の場所をいうものと解すべきである。

そこで、本件取引について見れば、前記(一)の形態別掲記<1>の場合(<5>も一部含まれる。)は、顧客からの注文を受けて販売契約を締結していたプレハブ建物又はテントの場所、並びに顧客に酒類の現物を引き渡していた(代金はプレハブ建物又はテントにおいて受領済み)トラツクの駐車場所がともに「販売場」であり、その余の<2>ないし<5>の場合は、顧客からの注文を受けて販売契約を締結し、代金の受領及び酒類の現物の引渡しも行われることがあつたプレハブ建物又はテントの場所が「販売場」であつたことが認められるのである。

(五) 以上(一)ないし(四)の本件取引の態様、本件取引の実質的主体、本件カードの性質、「販売場」の解釈に照らすと、前記(一)の取引形態別掲記<3>ないし<5>のように本件カードを発行していない場合はもちろんのこと、それを発行している場合も、原告自身が本件各捜索・差押場所において酒類を販売したと言うべきである。

3  請求の原因3は争う。酒類販売業免許制を定める法九条、一〇条の規定は、以下に述べる理由により、何ら憲法二二条一項に違反するものではない。

(一) 職業選択の自由

憲法上の自由権的基本権を大きく分類すると、思想・良心の自由・信教の自由・表現の自由等の精神的自由権と、財産権の不可侵等の経済的自由権に分けることができ、職業選択の自由は経済的自由権に含まれることが一般に承認されている。

後者の経済的自由権については、資本主義の発展に伴い、資本主義経済の弊害の是正及び国民経済の均衡のとれた調和的発展という観点から、国家による積極的な介入が要請されるに至り、政策上の規制の対象とされることとなつたのである。

職業選択の自由は、すべての人権に内在するいわゆる内在的制約のほか、右のように国家が経済的自由に対して規制を加える必要があるという歴史的要請から社会国家的立場に基づく政策的制約を受けるものと解し、憲法二二条一項の「公共の福祉」に政策的制約を含ましめることは一般に承認されている。

右にいう内在的制約とは、他人の生命・健康への配慮、他人の人間としての尊厳への配慮、人権相互の調整等の観点から導かれる人権の限界であると言うことができ、こうした観点からの人権の制限を消極目的の制限と呼ぶことができる。これに対し、政策的制約は、経済的自由に対して積極的な政策目的のために加えられるものであり、こうした観点からの制限は積極目的の制限と呼ぶことができる。

(二) 職業選択の自由の制約の憲法適合性に関する司法審査の基準

前記のとおり、職業選択の自由は、消極目的の制限と積極目的の制限を受けるものであるが、同じ職業選択の自由に対する制限をこの両者に区別する実際的な意義は、職業選択の自由を制約する具体的な規制制度の規制目的が右両者のいずれに属するかによつて、その制度の合憲性を判断する場合の司法審査の基準が異なるところに表われる。

憲法二二条一項の職業選択の自由の制約の憲法適合性に関する司法審査の基準を明らかにした最高裁判例としては、昭和四七年一一月二二日判決と昭和五〇年四月三〇日判決とがあるが、これらを整理すると、次のようになる。

すなわち、職業選択の自由に対する積極目的の制限の場合は、規制の目的において一応の合理性が認められ、また、規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白でない限りは、その規制は合憲である。一方、消極目的の場合は、規制の目的における基準は必ずしも明確でないが、規制の手段・態様においては、よりゆるやかな制限によつては規制の目的を十分に達成することができないと認められることが合憲性の審査基準となるのである。

(三) 酒類販売業免許制の目的

(1) 酒税法は、酒類販売業免許制の目的について直接明言した規定は設けていない。しかし、昭和一三年から施行をみた酒類販売業免許制の立法の目的が後記(四)(2)カ(イ)のとおり酒税の保全を期することにあつたこと、法一〇条一一号には免許を拒否し得る消極要件として「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため……販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合」を掲げていること、法一一条一項が「……販売業免許を与える場合において、酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持するため必要があると認められるときは、……条件を附することができる。」と規定していること、法一四条が、二年以上引き続き酒類の販売業をしない場合に酒類販売業免許を取り消すことができる旨規定していること等に着目すれば、酒類販売業免許制の目的は「酒税の保全」という基本目的のために「酒類の需給の均衡の維持」を図ることにあると認定できる。

このことは、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和二八年法律第七号)一条が「この法律は、酒税が国税収入のうちにおいて占める地位にかんがみ、酒税の保全及び酒類業界の安定のため、酒類業者が組合を設立して酒類の適切な需給調整等を行うことができることとするとともに、政府が酒類業者等に対して必要な措置を講ずることができるようにし、もつて酒税の確保及び酒類の取引の安定を図ることを目的とする。」と規定し、また同法八四条三項が、大蔵大臣は、酒類の販売の競争が正常の程度を超えて行われていることにより、酒類の取引の円滑な運行が阻害され、酒類製造業又は酒類販売業の経営が不健全となつており、又はなるおそれがあるため、酒税の滞納又は脱税が行われ、又は行われるおそれがあると認められる場合においては、酒販組合や酒類販売業者等に対して必要な措置がとれる旨規定しているところからも窺い知ることができよう。

(2) 酒税の保全という基本目的は、更にいくつかの側面から考察することができる。

第一に、酒税の逋脱防止の目的である。法一〇条が、免許申請者等が過去において法律違反の事実があつた等遵法精神に欠けるところがあると認められる場合(一号ないし五号、七号、八号)、取締上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合(九号)を消極要件としていることは、酒税の逋脱を企て、又はこれに荷担する危険性が高い場合に免許を拒否できることにしたものと解し得るのである。

第二に、酒税の滞納防止の目的である。酒類販売業者は酒類製造者と担税者(消費者)を結ぶパイプ役であり、いわば酒税の間接的な徴収機関と言える重要な地位にあるのであるから、酒類販売業者の経営内容が悪化すれば納税義務者たる酒類製造者の納付すべき酒税の回収が困難となる。法一〇条六号が、免許申請者が滞納処分を受けた者である場合、すなわち資力が不十分である場合を消極要件としているのは右の趣旨である。

(3) また、酒類の需給の均衡の維持という直接の目的について考察すれば、それは社会経済政策の見地から、消費者の需要に対して適正に、つまり過不足なく供給し得るよう、酒類販売業者の乱立や過当な販売競争を防止し、その経営の安定を図ることを目的とするものである。

(四) 酒類販売業免許制の合憲性

(1) 規制目的の合理性

ア 前記のとおり、酒類販売業免許制の基本目的は酒税の保全であるが、酒税は国の租税収入の主要な一部をなしており、酒税徴収の確保は国家財政上極めて重要な課題であるから、酒税の保全という基本目的が財政政策の一種であることは明らかである。すなわち酒類販売業免許制は、前述したところの、職業選択の自由に対する積極目的の制限に属するものなのである。

したがつて、酒類販売業免許制の合憲性の司法審査の基準としては、前記昭和四七年判決の考え方により、規制の目的において一応の合理性が認められ、また規制の手段・態様においてもそれが著しく不合理であることが明白でない限りは、合憲と判断されるべきである。

イ 国は国民生活の安定の確保のみではなく、社会・経済の発展をも図るべき重大な責務を担つているのである。これらの責務を果たすために、国は、予めこれに要する経費を調達しなければならないのは当然のことであるが、更にその前提として、国の存立の維持及び統治機構の運営のための経費を調達する必要があることもまた自明の理である。

右の経費は租税によつて賄われるのであるから、憲法は国の重要な権能として租税の賦課徴収権を認め(八四条、八六条、六〇条)、これに対応して国民の納税義務を明記しているのである(三〇条)。

したがつて、租税の確保の要請は、憲法二二条一項の「公共の福祉」に含まれることは明らかである。

ウ また、もとより租税の確保のために、憲法の枠内において、いかなる租税を課し、いかなる方法で徴収するかは、租税法律主義の原則(憲法八四条)に基づく立法府の政策的技術的な裁量に委ねられているのであつて、酒税という税目もこの立法裁量によつて採用されているのである。

このように酒類販売業免許制は、酒税の保全を基本目的とし、併せて酒類販売業者の経営の安定を図つているのであり、それは憲法二二条一項の「公共の福祉」に含まれるものであるから、規制の目的において、前記昭和四七年判決の言う一応の合理性はもとより、十分の合理性を有しているのである。

(2) 規制の手段・態様の合理性

ア 酒税法は、酒類の販売についてはその販売場ごとに所轄税務署長の免許を受けなければならないと規定する(法九条一項)とともに免許を受けないで酒類を販売した場合の罰則を規定している(法五六条一項一号)。すなわち免許の効力は免許を受けた販売場に限つて生ずる。

右免許の法的性格は、行政官庁である税務署長の行政処分であつて、税務行政上の特別の必要に基づいて一般に禁止している酒類の販売を、特定の要件を備えた者に対し許容(解除)しようとするものであり、それは免許を受けた者に対して新たな権利を設定するものではなく、単に不作為義務を解除するにとどまるものと解されている。

そして、法一〇条は、免許の許否の権限を有する税務署長の恣意的な判断を排除して免許処分の公正が期せられるよう、免許を与えないことができる場合の消極要件を制限列挙しており、免許を与えることを原則としている。

一〇条の掲げる消極要件の中には、必ずしも一義的でないもの、すなわち「正当な理由がないのに取締上不適当と認められる場所に……」(九号)、「経営の基礎が薄弱であると認められる場合」(一〇号)、「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため……免許を与えることが適当でないと認められる場合」(一一号)のように税務署長の認定判断を経ることを予定しているものもあるが、この税務署長の認定判断権も法規裁量と解され、免許を拒否された申請者の法的救済手段に欠けることはない。更に、執行上の統一化を図るため、酒類販売業免許の取扱実務等について昭和三八年一月一四日付間酒二―二「酒類の販売業免許等の取扱について」(国税庁長官通達)で、その内容を具体的かつ詳細に定め、酒類販売業免許の適正合理化と酒類の円滑な供給に資することとしている。

イ 酒類販売業者は酒類製造者と担税者(消費者)を結ぶパイプ役であり、いわば酒税の間接的な徴収機関と言える重要な地位にあり、酒類製造者としては酒類販売業者から酒類販売代金が確実に回収されなければ納税の負担に耐えることができないことになるから、酒類販売業者の経営の安定を図ること、また信頼し得る酒類販売業者に販売業の任に当たらしめることは酒税の保全上極めて重要な要請である。このことは、酒類販売業者一場当りに転嫁される年間酒税額が一〇〇〇万円余と多額であることからも容易に推測できる。

仮に、経営基盤のぜい弱な者が参入したり、過度に酒類販売業者が増加して、過当競争が行われた場合には、酒類の取引に混乱を招き、酒類販売業者の経営内容が悪化して酒類製造者の納付すべき酒税の回収が困難となり、ひいては、酒税の確保、すなわち国家財政の危機を招くおそれがある。現に、酒税の滞納が他の税目に類をみないほどに小さく、高率な酒税が効率的、かつ、安定的に確保できているのは、この制度に負うところが極めて大きいのである。

ウ 酒類小売業者はそのほとんどが中小零細業者であり、その粗利益率は、昭和五五年度一七・六パーセントと、他の一般小売業者の三〇・六パーセント(食料品小売業者平均二六・九パーセント)に比べ低率である。このことからも、免許制が酒類の価格安定ひいては国民の消費経済に役立つていることは明らかである。しかしながら、粗利益率の低い酒類を取扱う業者は、乱立、乱売に対する抵抗力が小さく、仮に、免許制度が廃止されれば、酒類販売業者のほとんどを占める中小零細業者は、その存立を脅かされ、その結果として酒税の確保を危うくし、財政問題のほか、種々の悪影響を与えることは明らかである。

エ また、酒類は致酔飲料であることから、秩序ある供給を図る必要が要請されるところであり、仮に、酒類を自由に誰でも販売できることとした場合には、飲酒による事故、アルコール依存症、未成年者の飲酒など、種々の社会問題が増大するおそれもある。酒類販売業免許制は、これらの問題を防止することにおいて社会秩序の維持、国民保健衛生に大きく寄与しているのである。

オ 以上のとおり、酒類販売業免許制はその規制の手段・態様及び対象において、十分の合理性と必要性が認められるのであつて、著しく不合理であることが明白とは到底言えないのである。

カ なお仮に、前記昭和四七年判決の司法審査の基準をひとまずおくとしても、酒類販売業免許制という規制の手段・態様は、以下に述べるとおり十分な合理性と必要性があり、合憲であることは明らかと言わねばならない。

(ア) まず、酒類販売業者に対する規制手段としては、法が現に酒類販売業者に対する記帳義務(四六条)、申告義務(四七条)、承認を受ける義務(五〇条)、届出義務(五〇条の二)、質問検査受忍義務(五三条)等及びそれらの義務違反に対する罰則(第九章)を規定して営業活動の態様、内容を規制しているのであるから、酒類販売業者の規制手段として、免許制ではなく、右に掲記したような営業活動の態様、内容に対する諸方策のみ、あるいは届出制を採用することで足りるのではないかとの疑問があるかもしれないが、仮にこのような規制手段にとどめるならば、極めて多数に及ぶ全国の酒類販売場の数(昭和五六年三月時点で約一七万場であり、他業種と比べてもかなり多い。)からしても、また規制を緩めることで酒類販売業者として新規参入してくる者の数が従前以上に増加することが予想されることからしても、酒類販売業者に対する十分な指導、監督を行うためには、行政事務量の増加に伴うより多数の人員と経費を必要とすることは必至である。このような行政事務及び財政に対するマイナス要因は極めて大きいものであつて、現実にはほとんど実施は困難であるといわなければならない。

(イ) 次に、酒類販売業免許制という規制の手段・態様は、その立法事実に照らしても、十分の合理性と必要性があるのである。

すなわち、酒類販売業についての免許制は、昭和一三年四月一日から実施されたものであるが、当時の酒類販売業者数は二四万人から二五万人の多きに達していたことから、各業者間の販売競争は激化の一途をたどり、乱売に拍車がかかつて売行不振をきたす販売業者が次第に増加し、販売業者の倒産や名義変更は年間を通じて全業者数の三割にも達する状況となつた。一方、酒類の醸造業者もその影響を受けて売掛代金の回収に多大の困難を来たし、最盛期には約一万二千人もあつた醸造業者は毎年二百人程度のものが廃業を余儀なくされ、昭和一三年当時には七千数百人に激減した。

このような社会的、経済的な事情を背景として、時の政府は免許制を立法化し、酒類の醸造、販売に関する従来の弊害を是正し、酒類販売業者等の健全な発展と酒税の保全を図つたのである。

そして、酒類販売業をめぐる状況は現在においても基本的には変つていないと言うべきである。すなわち、仮に酒類販売業免許制を廃止し、酒類販売業者を自由競争のもとにおいたならば、前記のようにそのほとんどが中小零細業者であり、他業種に比べてマージン率も低く、酒類の需要が伸び悩んでいる現状に照らせば、業者の乱立あるいは大資本の経済的圧迫に対して抵抗力の少ない販売業者としてはその存立が脅かされ、ひいては酒税の確保に困難を来す事態を生ずるおそれも十分に考えられるのである。

(3) 結論

以上詳論したとおり、酒類販売業免許制は、その酒税の保全という目的において合理性が認められ、これを達成するための手段・態様においても合理的と認められるものであつて、憲法に適合するものと言うべきである。

4  請求の原因4の事実は認める。

5  請求の原因5の事実は不知。

第三証拠関係 <略>

理由

一(本件取引及び本件各捜索・差押の存在)

請求の原因1の事実は、別紙(二)差押酒類目録記載の各酒類の価額の点を除き、当事者間に争いがない。

二(酒税法違反の事実の有無について―本件取引の実態及びその主体)

本件各捜索・差押は原告に酒類の無免許販売という酒税法違反の事実がないのになされた違法なものであるとする請求の原因2について判断する。

1  まず、本件取引の実態につき検討する。

(一)  本件取引に用いられた本件カードの形式・内容が請求原因2(二)記載のとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  <証拠略>を総合すると、次の事実が認められる。

(1)  本件取引においては、次の二つの形態のものが大きな割合を占める。

すなわち、一つは、顧客がカード販売所において希望する酒類の銘柄及び数量等が記載された本件カードを酒類代金を支払つて受取り、これを右販売所の脇あるいはその近所に駐車中の専用配送車(この駐車位置については前記のとおり当事者間に争いがない。)まで持参して、酒類と引換える、というものである。

他の一つは、顧客が代金を支払つてあるいは支払わずに右同様の本件カードを受取り、酒類は一両日中に専用配送車から顧客の住所に配達される、というものである。この場合、本件カードの控に記載されている顧客の住所、地図等に従つて配達され、カード発行の際代金が支払われなかつたときは、顧客の住所において酒類と引換えに代金の支払を受ける。また、この場合に、顧客の手元にある本件カードが回収されないこともあつた。

別紙(一)取引目録一2、二2、三、四記載の各取引においては、右のうち後者の取引形態のものが多かつた。

(2)  そのほかに、カード販売所において顧客から電話注文を受けて、同所あるいは専用配送車から酒類を配達してその際代金を受取るという取引形態も相当数あつたが、この場合、本件カードは電話を受けた際カード販売所において内部的に作成される。また、本件カードが発行されずに右(1)の方法により酒類の取引がなされる場合も若干数あつた。

(3)  顧客から代金が支払われたときは、その事実を明らかにしておく意味において、本件カードあるいはその控に、「代済」あるいは「済」と記載されることが多かつた。また、必要に応じて、配達のため場所の指示、その地図、顧客の在宅日時、引取る空ビンがあるときはその旨等が記載された。

(三)  右(一)、(二)認定の本件カードの形式・内容、取引における本件カードの用いられ方、取引の具体的態様を見ると、本件取引の実態は、顧客が代金を支払つて酒類を取得する取引、すなわち酒類の売買にほかならず、そこにおいて、本件カードは、顧客の酒類買受の意思を明確にしたうえでその売買契約成立の事実を明らかにし、また、酒類の引渡し又は配達の利便のために用いられ、更に、酒類代金支払の有無を明らかにし、必要に応じて引取り空ビンの有無といつた酒類売買に伴う附随的事項を記載しておくといつた機能を果たしていると言うことができる。

換言すれば、本件取引において、顧客に対し本件カードが発行された場合はそのときに、それが発行されなかつた場合は電話であるいは直接に口頭による酒類買受の申込みがあつてそれに対してカード販売所の係員が承諾したときに、酒類の売買契約が成立し、その後の酒類の引渡し、配達、本件カードの回収、代金の支払等はその契約の履行にすぎないと解されるのである。

なお、原告は、本件カードを販売した角田酒販はその販売時に当該カード販売所から原告が酒類販売業の免許を受けている前記福島県東白川郡矢祭町の販売場に直接電話で顧客名簿を連絡する旨主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はなく、仮にそのような事実があつたとしても、本件取引の実態についての右の判断を左右するに足りないと解する。

2  本件カードにおいて前記のとおり原告は申込みの名宛人になつていて、特約店として角田酒販が記載されており、<証拠略>によると本件取引に先立つて広く配付された広告ビラには本件取引の主体を訴外角田酒販と解し得る記載があることが認められ、これらの事実から、本件取引における酒類売買契約の売主たる主体が角田酒販と解し得る余地があるので、次に、この主体の点について検討する。

前記<証拠略>の結果(後記採用しない部分を除く。)によると、次の事実が認められる。

(一)  角田酒販は本件取引当時酒類販売の免許を有しておらず、本件取引以外に実質的な営業活動を行つていなかつた。原告は角田酒販の株主でいわゆるオーナーであり、同社から俸給の支払を受けている役員、社員は原告のみであり、同社の代表者も原告が実質上の経営者である訴外東菱酒造株式会社の社員としてそこから給料の支払を受けていた。

(二)  本件取引の形態は、原告が知人等に相談した末決定したもので、本件取引に先立つて配布した広告ビラの文案作成及びその印刷の発注、新聞折込みの依頼並びに本件カードの考案等は原告自ら行い、カード販売所の使用料の支払も原告がした。また、カード販売所の係員は原告が前記東菱酒造株式会社から派遣した者か原告が雇入れた者であつて、それらに対する指示は原告が行つた。

(三)  原告と角田酒販との間で本件カード販売に係る手数料について明確な定めはなされていなかつた。

(四)  カード販売所に置かれていた酒類、その脇あるいは近所に駐車していた専用配送車及びそれに積載されていた酒類はすべて原告の所有である。

<証拠略>中、以上の認定に反する部分は採用しない。

右(一)ないし(四)の事実を総合すると、本件取引における酒類売買契約の売主たる主体は、実質上も、法律上も原告であつて、角田酒販は本件カードの販売において形式上その名義を用いられたにすぎないことは明らかである。

3  ところで、酒類の販売業をしようとする者は販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならない旨規定する法九条一項において、「販売場」とは「継続して販売業をする場所」と規定されており、これに、継続して業として酒類の売買契約を締結する場所が含まれることは右字義から明らかであるが、前記認定の本件取引の期間、そこで取引された酒類の量から言つて、原告は、各カード販売所において継続して業として酒類の売買契約を締結し、そこを販売場として酒類の販売業をしたと言わなければならない。

そして、原告は、前記のとおり福島県東白川郡矢祭町大字中石井字小野沢一〇番地を販売場として所轄の白河税務署長から酒類販売業の免許を受けていて、本件の各カード販売所の所在地においてはその免許を受けていないのであるから、原告の行つた本件取引が法九条一項に違反することは明らかである。

4  前記<証拠略>の結果によれば、本件各捜索・差押の対象となつた酒類はいずれも本件取引に係るものであることが認められるから、本件各捜索・差押には請求の原因2に主張するような違法は何らない。

三(酒類販売業免許制の合憲性について)

原告は、請求の原因3において、酒類販売業免許制を定める法九条、一〇条の規定は憲法二二条一項に違反する結果、本件各捜索・差押は違法である旨主張する。これは、酒類販売業について免許制によつて規制すること自体が違憲であると主張するものと解される。以下、この点について判断する。

1(一)  法九条一項本文は、酒類の販売業をしようとする者はその販売場ごとに所轄税務署長の免許を受けなければならない旨規定し、法一〇条はその一号ないし一一号において右免許付与の消極要件を定めて、これらの一に該当する場合は免許を与えないことができるとする。また、法五六条一項一号は免許を受けないで酒類を販売した場合の罰則を規定している。

右免許の法的性格は、一般に禁止している酒類の販売を特定の要件を備えた者に対し解除する、講学上の許可に相当すると解され、また、右の法条の規定の仕方から見て、免許の付与を原則的なものとし、それを拒否できる場合を限定的に列挙したものと解される。

(二)  右のような酒類販売業免許制が憲法二二条一項が保障する職業の自由を制約するものであることは明らかであり、しかも酒類の販売業をしようとする者の狭義における職業選択の自由そのものを制限するものと言わなければならない。したがつて、右免許制の合憲性を肯定し得るためには、それが、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要すると言うべきである。

2  右酒類販売業免許制の立法目的を見るに、これが酒類に酒税を課すことを目的とした酒税法(法一条)において定められ、免許許否を決定する行政庁が税務担当機関たる税務署長とされていること、酒税の保全上需給の均衡を維持する必要がある場合に右免許を拒否し(法一〇条一一号)、あるいは免許に条件を付することができるとされていること(法一一条一項)、法は酒類販売業者に安定した資力と経営の基礎の健全さを要求していると解されること(法一〇条六号、一〇号)、また、<証拠略>によると、昭和一三年に酒類販売業免許制が導入された際の目的が酒類販売業者の乱立を防止してその経営を安定させ、酒税の保全を図るという点にあつたと認められることなどに照らすと、その基本的目的は、酒類販売業者の経営の安定を通じて酒税の保全を図ることにあると考えられる。

なお、免許の要件として酒類販売業者の安定した資力と経営の基礎の健全さや、販売場の設置場所が取締上不適当な場所でないこと(法一〇条六号、九号、一〇号)を実質的に要求していること等から見て、法は、販売段階での酒類の品質保持、販売所の良好なる衛生状態の維持、飲酒による事故防止、未成年者の飲酒防止等の観点からの健全な酒類販売秩序の確保をも、右免許制の附随的効果として意図していることが窺われ、また、そのような附随的諸効果が実際に社会において期待されていることは公知の事実である。

3  国の税徴収の確保が国家財政上重要な要請であることは言うまでもなく、この観点から、酒税の保全は、国家の存立や国民のための各種政策の基礎となる財政政策の一環をなしていると位置付けられるから、酒類販売業免許制の前記基本的目的自体は重要な公共の利益に合致していると言うことができる。また、右免許制の前記附随的諸効果が公共の福祉に合致することも明らかである。原告は、職業の自由を含む経済的自由に対する政策的・積極的規制が公共の福祉として許されるためには、右目的が、経済的弱者保護ないし社会権の実現のためのものでなければならない旨主張するが、公共の福祉の内容をそのように限定的に理解しなければならない合理的根拠は見出し難い。

4(一)  ところで、憲法二二条一項の保障する職業の自由に対する規制の合憲性の司法審査については、原告及び被告が指摘するように、社会政策ないし経済政策上の積極的な目的のための規制の場合と、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的規制の場合とに分類し、前者については、立法府の裁量的判断を尊重して、規制の目的において一応の合理性が認められ、また、規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白でない限り、その規制は合憲であるが、後者については、規制の手段・態様において、よりゆるやかな制限によつては規制の目的を十分に達成することができないと認められるか否かによつて合憲性を審査する、とされている。

本件の酒類販売業免許制の基本的目的は前記のとおり酒税の保全という国の財政政策に係るものであるから、分類としては、右の前者の積極的目的のための規制の場合に入れられるべきものと言える。ところで、右の前者の場合であつても尊重されるべき立法府の判断の裁量の範囲については事の性質上おのずから広狭があり得るのであり、本件においては、右裁量の範囲について考察する上で特徴的な事柄として、次の諸点に留意しなければならない。

(1)  酒類販売業免許制は、直接、例えば税の増収を図るために事業を行う、税率を引上げるといつた、ある財政政策を実行しようとするわけではなく、課税要件に該当する場合に酒類製造者等から徴収される酒税の保全を酒類販売業者の経営の安定を通じて図るという点において、本来意図している目的との関係が間接的な規制措置である。

(2)  法は、酒税納税義務者である酒類製造業者等に対しては、製造場ごと毎月ごとの納税申告書提出義務(法三〇条の二)、製造等に関する事項の帳簿記載義務(法四六条)、製造場の位置及び製造設備等についての申告義務(法四七条)、質問・検査・検定受忍義務(法四九条、五三条)、製造方法等について承認を受ける義務(五〇条)等を課し、それらの懈怠については罰則を規定し(法五四条以下)、必要によつて酒税保全のための担保の提供を命じ得るとする(法三一条)など、酒税の保全のために各方面から具体的措置を講じている。

(3)  そもそも、商品の販売業免許制という制度自体、一般的に、免許要件の定め、その運用が適正になされなければ、一般消費者の利便、新規参入希望者の利益の犠牲において既存業者の利得に資する結果を招来するおそれを本来内包している。

(4)  酒類販売業免許制が導入された昭和一三年当時と現在とでは、社会的、経済的な諸情勢が著しく変化していることは顕著な事実であり、また、酒税法の体系、特にその課税体系も大きく異つており、更に、酒類販売の自由競争を認めれば、その活発な販売競争によつて販売量が増大し、結果的には酒税徴収額も増大することになるとする原告主張も、その筋道自体としては一応肯定し得ないわけではないこと等に照らすと、酒類販売業者の乱立を防止してその経営を安定させ、酒税の保全を図る、という当時の立法事実が現在においてどのように妥当するかは、考察に値する一つの問題と言つてよい。

(二)  以上のような諸点に照らすと、本件の酒類販売業免許制の合憲性判断に当たつて尊重されなければならない立法府の判断の裁量の範囲は相当程度限定されたものになると言わなければならない。

なお、酒類販売業免許制による前記2記載の附随的諸効果が右消極的規制に係るものに属することは明らかである。

5(一)  そこで、右の観点から酒類販売業免許制の合憲性について検討してみるに、まず、その基本的目的及び附随的効果が公共の福祉に合致することは前記のとおりである。また、その目的を達成するために免許制という規制手段を用いることの当否(規制の手段・態様の合理性)について考察するに、<証拠略>によれば、酒税が歴史的にもまた現在においても、租税収入のなかで重要な地位を有しているうえ、他の消費税と比較してその課税率が極めて高いことが認められ、このような事情からすれば、酒税の滞納や脱税を防止し適正な税収を得るには、その直接の納税義務者である酒類製造業者等に対してはもとより、同者と酒税の実質的負担者である消費者との中間に立ち、消費者から受領した、酒税額を含んでいる酒類販売代金のうちの相当部分を酒類製造業者等に支払うという過程を通じて、間接的にせよ酒税の納入に重大な役割を担つている酒類販売業者に対しても合理的な規制を加えることは許されるものと解すべきである。こういつた観点からすれば、許可制という規制手段を通じて、酒類販売業者の経営を安定させることによつて酒税を保全するとともに前記附随的効果の実現を図るという筋道自体にはそれなりの合理性が認められ、加えて、多数に及ぶ全国の酒類販売場の数(<証拠略>によると、昭和五六年三月時点で約一七万場あることが認められる。)、規制されるべき事柄の性質を踏まえて、酒類販売業者に対する十分かつ効率的な指導、監督という観点から考えると、酒類販売業について免許制という許可制を導入することによつて規制すること自体は、原告が主張する届出制等の他の想定し得る規制手段と比較しても、その必要性と合理性を肯認することができる。

したがつて、酒類販売業を免許制によつて規制すること自体は、前記のとおり立法府の判断の裁量の範囲が相当程度限定されたものとなることを前提として判断しても、違憲と言うことはできない。

(二)  結局、酒類販売業免許制について違憲の問題が生じる余地があるとすれば、それは、免許制という制度それ自体においてではなく、免許要件において、それが、職業の自由の保障との均衡を失するような形で規定され、適用された場合に問題となり得ると言わざるを得ないが、本件においては、原告は、前記のとおり、酒類販売業を免許制によつて規制すること自体の違憲性を主張するのであつて、原告が法一〇条所定の要件のいずれかに該当するとされるために、酒類販売業の免許申請をしたにもかかわらず免許が受けられず、あるいは、免許申請をしたとしても免許を受けられないことが確実視され、それによつてその職業の自由が侵害されたというような趣旨を主張するものではないから、右に述べた免許要件の規定適用の違憲性の問題についてまで判断する必要はない。

ちなみに、法一〇条に規定する免許要件(消極要件)のうち、申請者又はその代理人、役員等が過去において法律違反の事実があつた等遵法精神に欠けるところがあると認められる場合(法一〇条一号ないし五号、七号、八号)、申請者が過去に税の滞納処分を受けた場合(同条六号)、破産者で復権を得ていない場合(同条一〇号前段)の各要件は、規定の内容が一義的であり、一般に各事項の該当者が社会的に影響のある営業を営む適性を欠くと認められるようなものであるから、職業の自由の保障との均衡を失するおそれは一般に考えにくいが、取締上不適当と認める場所に販売場を設けようとする場合(同条九号)、申請者の経営の基礎が薄弱であると認められる場合(同条一〇号後段)、酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合(同条一一号)の各要件は、その規定内容が必ずしも一義的ではなく、適用の仕方のいかんによつて職業の自由の保障との均衡を失するおそれがないとは言えない。特に、右一一号の需給均衡に係る要件は、多義的な解釈、運用の余地が存するために、適正に適用されなければ、行政庁の広範な裁量を許し、その結果職業の自由の保障との均衡を失するおそれが少なからず存することは否定できないところであつて、例えば、単に機械的な距離制限基準のみによつて新規参入希望者を排除し、その利益や一般消費者の利便の犠牲のもとに既存業者の利得に資する結果となるような適用がなされるならば、違憲の疑いも免れないであろう。その観点から、国においても、国税庁長官通達等において免許要件について具体的指針を設けて適正な運用を図ろうとしていることが窺える(<証拠略>)が、本件においてその適否について判断する必要がないことは前記のとおりである。

6  よつて、酒類販売業免許制を定めた法九条、一〇条の規定が憲法二二条一項に違反するから本件各捜索・差押も違法であるとする原告の主張は理由がない。

四 以上の次第で、本件各捜索・差押は違法であるとする原告の主張はいずれも理由がなく、その余の点について判断するまでもなく、本件請求は理由がないことになるから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 岩渕正紀 吉村正 小林敬子)

別紙(一)

取引目録

一1(一) 取引期間 昭和五六年九月中旬から同月二九日まで

(二) 申込証(ボトルカード)販売場所 茨城県水戸市若宮町五丁矢場一〇六六番地の那珂川の河川敷内に設置されたプレハブ造り倉庫風建物及びテント内

(三) 右カードと引換える酒類を積載した専用配送車(トラツク)の駐車位置 右建物脇

2(一) 取引期間 昭和五六年一〇月一〇日頃から同年一一月二七日まで

(二) 申込証(ボトルカード)販売場所 前記1(二)記載の建物及びテント内

(三) 専用配送車駐車位置 右建物脇

二1(一) 取引期間 昭和五六年九月一八日頃から同月二九日まで

(二) 申込証(ボトルカード)販売場所 千葉県柏市花野井字南花崎七一九番地二三の駐車場に設置されたテント内(同月一八日頃から同月二三日まで) 右駐車場脇路上(同月二四日から同月二九日まで)

(三) 専用配送車駐車位置 右テント脇(同月一八日頃から同月二四日まで) 右路上から約八〇メートル離れた同市若柴字須賀井二〇一番地一〇、一一の市営駐車場(同月二五日から同月二九日まで)

2(一) 取引期間 昭和五六年一〇月五日頃から同年一一月二七日まで

(二) 申込証(ボトルカード)販売場所 千葉県柏市花野井字南花咲七一二番地一四の空地内に設置されたテント及びプレハブ造り簡易建物内

(三) 専用配送車駐車位置 右テント脇

三(一) 取引期間 昭和五六年一〇月三一日頃から同年一一月二七日まで

(二) 申込証(ボトルカード)販売場所 埼玉県草加市長栄町字東五二六番地一のゼンフク株式会社店舗内

(三) 専用配送車駐車位置 右店舗脇

四(一) 取引期間 昭和五六年一〇月中旬から同年一一月二七日までの間

(二) 申込証(ボトルカード)販売場所 横浜市旭区上川井町字堀谷二一六三番地五の空地に設置されたプレハブ造りの簡易建物内

(三) 専用配送車駐車位置 右建物脇

別紙(二)

差押酒類目録1の(1)

水戸税務署分―(1)

(収税官吏 根本博雄、増田茂雄)

(昭和56年9月29日捜索・差押)

a 捜索・差押の場所

茨城県水戸市若宮町字5丁矢場1066番地

角田酒販株式会社水戸出張所

b 差押酒類の内訳

No.

銘柄

単価(円)

本数

金額(円)

1

銀河

20

650

60

39,000

2

25

690

40

27,600

3

35

850

44

37,400

4

特級

2,200

8

17,600

5

1級

1,600

27

43,200

6

2級

1,100

77

84,700

7

東駒

1級

1,150

61

70,150

8

2級

850

110

93,500

9

純米

1,150

7

8,050

10

国華

1級

977

48

46,896

11

2級

678

139

94,242

12

紅一点

1級

895

44

39,380

13

2級

595

207

123,165

14

白雪

1級

1,390

16

22,240

15

月桂冠

1級

1,415

20

28,300

16

日本盛

2級

980

48

47,040

17

回春

2級

445

96

42,720

18

アル・エイト

2級

450

7

3,150

19

オールモルトパー43

2級

945

34

32,130

20

オールドパー

特級

6,800

12

81,600

21

レミーマルタン

特級

9,800

17

166,600

22

ホワイトホース

特級

2,950

15

44,250

23

ジヨニーウオーカー赤

特級

2,950

16

47,200

24

サントリーレツド

ジヤンボボトル

2級

1,700

15

25,500

25

ニツカG&G黒

特級

2,250

39

87,750

26

サントリーオールド

特級

2,395

48

114,960

27

ライスキー43

2級

990

11

10,890

28

味一番

550

19

10,450

29

タカラ

25°

690

20

13,800

30

タカラみりん

980

12

11,760

31

キリンビール(大)

ケース

4,895

140

34,265

32

〃(小)

ケース

4,895

120

29,370

33

アサヒビール(大)

ケース

4,795

140

33,565

金額合計 1,612,423

差押酒類目録1の(2)

水戸税務署分―(2)

(収税官吏 根本博雄)

(昭和56年11月27日捜索・差押)

a 捜索・差押の場所

茨城県水戸市若宮町字5丁矢場1066番地

角田酒販株式会社水戸出張所

b 差押酒類の内訳

No.

銘柄

単価(円)

本数

金額(円)

1

紅一点

1級

895

200

179,000

2

東駒

1級

1,150

1

1,150

3

こまくさ

2級

595

360

214,200

4

国華

2級

678

300

203,400

5

1級

977

556

543,212

6

東駒

1級

1,150

38

43,700

7

2級

890

33

29,370

8

2級

1,100

83

91,300

9

純米

1,150

73

83,950

10

サントリーレツド

ジヤンボボトル

2級

1,700

38

64,600

11

日本盛

2級

980

25

24,500

12

月桂冠

1級

1,415

33

46,695

13

白雪

1級

1,310

9

12,510

14

九重みりん

980

10

9,800

15

宝みりん

980

39

38,220

16

味一番

550

61

33,550

17

キリンビール(大)

ケース

4,895

ケース

13

63,635

18

アサヒビール(小)

ケース

4,795

ケース

11

52,745

19

銀河

25°

690

10

6,900

20

東駒

1級

1,150

1

1,150

21

邪馬台緑

945

23

21,735

22

サントリーリザーブ

特級

2,800

23

64,400

23

ホワイトホース

特級

2,950

35

103,250

24

サントリーオールド

特級

2,395

57

136,515

25

ニツカG&G

特級

2,200

47

103,400

26

カテイサーク

特級

2,950

32

94,400

27

ジヨニーウオーカー赤

特級

2,950

11

32,450

28

回春

2級

445

19

8,455

29

アル・エイト

2級

450

12

5,400

30

ライスキー43

2級

990

51

50,490

31

オールドパー

特級

6,800

23

156,400

32

レミーマルタン

特級

6,800

4

27,200

33

月桂冠

1級

1,415

1

1,415

34

2級

1,100

1

1,100

35

純米

1,150

1

1,150

36

国華

2級

678

1

678

37

1級

977

1

977

38

こまくさ

2級

595

1

595

39

紅一点

1級

895

1

895

40

東駒

2級

850

1

850

41

1級

1,150

1

1,150

42

サントリーレツド

ジヤンボボトル

2級

1,700

1

1,700

43

ホワイトホース

特級

2,950

1

2,950

44

カテイサーク

特級

2,950

1

2,950

45

回春

2級

445

1

445

46

アル・エイト

2級

450

1

450

47

サントリーオールド

特級

2,395

1

2,395

48

レミーマルタン

特級

6,800

1

6,800

49

ニツカG&G

特級

2,200

1

2,200

50

ライスキー43

2級

945

1

945

51

サントリーリザーブ

特級

2,800

1

2,800

52

オールドパー

特級

6,800

1

6,800

金額合計 2,586,927

差押酒類目録2の(1)

松戸税務署分―(1)

(収税官吏 田中敏英)

(昭和56年9月29日捜索・差押)

a 捜索・差押の場所

千葉県柏市若柴字須賀井201番地10及び同11に駐車中の原告が使用している車輛番号福島11せ3053の普通貨物自動車

b 差押酒類の内訳

No.

銘柄

単価(円)

本数

金額(円)

1

月桂冠

1級

1,415

9

12,735

2

タカラ焼酎

25°

690

4

2,760

3

ホワイトリカー

890

10

8,900

4

2級

1,100

10

11,000

5

1級

1,600

5

8,000

6

タカラみりん

980

9

8,820

7

純米

1,150

23

26,450

8

国華

1級

678

3

2,034

9

オールモルトパー

2級

945

12

11,340

10

回春

2級

445

20

8,900

11

アル・エイト

2級

450

20

9,000

12

アサヒビール(中)

ケース

4,095

20

81,900

13

紅一点

2級

595

156

92,820

14

国華

2級

678

198

134,244

15

サントリーオールド

特級

2,395

1

2,395

16

キリンビール(小)

ケース

4,395

60

263,700

17

日本盛

2級

980

8

7,840

18

国華

2級

678

4

2,712

19

ホワイトホース

特級

2,950

15

44,250

20

ジヨニウオーカー赤

特級

2,950

10

29,500

金額合計 769,300円

差押酒類目録2の(2)

松戸税務署分―(2)

(収税官吏 田中敏英、新橋健男、山崎好男、竹内俊彦)

(昭和56年11月27日捜索・差押)

a 捜索・差押の場所

千葉県柏市花野井字南花崎712番地の14

原告の販売場他5個所

b 差押酒類の内訳

No.

銘柄

単価(円)

本数

金額(円)

1

アサヒビール(中)

ケース

4,095

ケース5

20,475

2

〃(大)

ケース

4,795

ケース10

47,950

3

キリンビール(大)

ケース

4,895

ケース6

29,370

4

東駒

1級

1,150

119

136,850

5

国華

1級

977

22

21,494

6

黄桜

2級

980

50

49,000

7

白雪

1級

1,380

25

34,750

8

日本盛

2級

980

84

82,320

9

月桂冠

1級

1,415

23

32,545

10

純米

1,150

148

170,200

11

1級

1,600

15

24,000

12

東駒

2級

890

126

112,140

13

こまくさ

2級

595

358

213,010

14

タカラみりん

980

4

3,920

15

味一番

550

41

22,550

16

タカラ焼酎

25°

690

20

13,800

17

25°

690

65

44,850

18

20°

690

10

6,900

19

35°

690

32

26,220

20

サントリーオールド

特級

2,350

10

23,950

21

特級

2,350

36

86,220

22

ニツカG&G

特級

2,200

33

72,600

23

オールドパー

特級

6,800

2

13,600

24

レミーマルタン

特級

8,900

2

17,800

25

オールモルトパー43

2級

945

8

7,560

26

回春

2級

445

38

16,910

27

ライスキー43

2級

990

8

7,920

28

サントリーレツド

ジヤンボボトル

2級

1,700

7

11,900

29

ホワイトホース

特級

2,950

27

79,650

30

純米

1,150

1

1,150

31

国華

2級

678

1

678

32

こまくさ

2級

595

1

595

33

東駒

2級

890

1

890

34

国華

1級

977

1

977

35

2級

1,100

1

1,100

36

紅一点

1級

895

1

895

37

ライスキー43

2級

990

1

990

金額合計 1,437,729

差押酒類目録3

川口税務署分

(収税官吏 畔上洋、武田定三、持田茂)

(昭和56年11月27日捜索・差押)

a 捜索・差押の場所

埼玉県草加市長栄町字東526番地1ゼンフク株式会社内原告の酒類倉庫他2個所

b 差押酒販の内訳

No.

銘柄

単価(円)

本数

金額(円)

1

こまくさ

2級

595

250

148,750

2

国華

2級

678

363

246,114

3

キリンビール(大)

ケース

4,895

ケース14

68,530

4

アサヒビール(中)

ケース

4,095

ケース6

24,570

5

国華

1級

678

10

6,780

6

紅一点

2級

595

141

83,895

7

1級

895

133

119,035

8

2級

1,100

56

61,600

9

1級

1,600

30

48,000

10

黄桜

2級

980

20

19,600

11

東駒

2級

890

30

26,700

12

1級

1,150

27

31,050

13

純米

2級

1,150

24

27,600

14

爛漫

2級

980

3

2,940

15

銀河

25°

690

50

34,500

16

銀河

20°

650

30

19,500

17

35°

850

48

40,800

18

タカラ

25°

690

38

26,220

19

月桂冠

1級

1,415

24

33,960

20

白雪

1級

1,395

5

6,975

21

日本盛

2級

980

3

2,940

22

味一番

2級

550

19

10,450

23

タカラみりん

2級

980

10

9,800

24

回春

2級

445

50

22,250

25

ライスキー43

2級

945

13

12,285

26

ニツカG&G

特級

2,250

34

76,500

27

サントリーレツド

ジヤンボボトル

2級

1,700

7

11,900

28

サントリオールド

特級

2,395

12

28,740

29

ホワイトホース

特級

2,950

11

32,450

30

オールモトルパー43

2級

945

6

5,670

31

こまくさ

2級

595

9

5,355

32

紅一点

2級

595

12

7,140

33

国華

2級

678

11

7,458

34

1級

1,600

8

12,800

35

2級

1,100

7

7,700

36

月桂冠

1級

1,415

7

9,905

37

日本盛

2級

980

1

980

38

純米

1,150

2

2,300

39

東駒

1級

1,150

1

1,150

40

2級

890

2

1,780

41

回春

2級

445

20

8,900

42

味一番

550

7

3,850

43

銀河

35°

850

10

8,500

44

25°

690

10

6,900

45

タカラ

25°

690

10

6,900

46

タカラみりん

980

3

2,850

47

ライスキー43

2級

990

28

27,720

48

オールモルトパー43

2級

945

22

20,790

49

サントリーオールド

特級

2,395

10

23,950

50

アサヒビール(大)

ケース

4,795

ケース2

9,590

51

〃(中)

ケース

4,095

ケース2

8,190

52

キリンビール(小)

ケース

4,395

ケース1

4,395

53

1級

1,600

1

1,600

54

こまくさ

2級

595

1

595

55

オールモルトパー43

2級

945

1

945

金額合計 1,417,582

差押酒類目録4

保土ヶ谷税務署分

(収税官吏 蓮見進弘、山本敏、北野一朗)

(昭和56年11月27日捜索・差押)

a 捜索・差押の場所

神奈川県横浜市旭区上川井町字堀谷2163番5

角田酒販株式会社横浜出張所他2個所

b 差押酒類の内訳

No.

銘柄

単価(円)

本数

金額(円)

1

カテイサーク

特級

2,950

12

35,400

2

特級

2,950

19

56,050

3

オルドパー

特級

6,800

11

74,800

4

サントリーオールド

特級

2,395

8

19,160

5

こまくさ

2級

595

82

48,790

6

サントリーオールド

特級

2,395

10

23,950

7

国華

1級

895

1

895

8

こまくさ

1級

595

1

595

9

国華

2級

778

1

778

10

純米

1,150

1

1,150

11

東駒

2級

890

1

890

12

ライスキー43

2級

990

1

990

13

アサヒビール(中)

ケース

4,050

ケース2

8,100

金額合計 271,548

別紙(三)

本件ボトルカードの形式と内容

(表)

申込書

(ボトルカード)

酒類の銘柄・等級・数量

福島県東白川郡矢祭町大字小野沢

全酒類卸売商

古市滝之助 殿

東京都台東区東上野5―24―10

角田酒販株式会社

特約店 代表取締役 井上久寿男 <印>

記号 番 号記号

(裏面の注意書きをお読み下さい。)

(裏)

ご注意

<1> この申込証(ボトルカード)は、古市滝之助商店又はその代理店に掲示されれば、表記の商品とお引換え致します。

<2> この申込証(ボトルカード)は、古市滝之助商店又はその代理店のほか、緊急に入手したい方は、これらの各店の専用配送車に提示して商品の前渡しを受けることもできます。

<3> この申込証(ボトルカード)を専用配送車に提示された場合は、配達料はいただきません。(その他の場合は配送料の実費を申し受けます。)

<4> この申込証(ボトルカード)の申込金は返還いたしません。又、申込証の盗難、紛失、滅失等については責任を負いかねます。

<5> この申込証(ボトルカード)を発行後、商品の販売価格に差額を生じた場合は、その差額分をご負担していただくことになりますので速やかに御提示、御引換え下さい。

<6> この申込証(ボトルカード)に特約店の住所、店名及び捺印がないものは無効とします。大切にお取り扱い下さい。 以上

別紙 (四)

逸失利益計算一覧表 (単位:円、円未満省略)

1. 水戸税務署分

(1) 1日の純利益 89,831

〔計算〕 実働日数10日(S56.9.19~56.9.28)

売上額(A) 8,154,030

仕入額(B) 6,926,275

経費額(C) 329,436

利益額(D) A-(B+C)  898,319

D÷10=89,831

(2) 1月の純利益  2,245,775

〔計算〕 89,831×25=2,245,775

2. 松戸税務署分

(1) 1日の純利益 43,006

〔計算〕 実働日数8日(S56.9.18~56.9.28)

売上額(A) 4,419,156

仕入額(B) 3,772,712

経費額(C) 302,395

利益額(D) A-(B+C) 344,049

D÷8=43,006

(2) 1月の純利益 1,075,153

〔計算〕 43,006×25=1,075,153

3. 川口税務署分

(1) 1日の純利益 19,459

〔計算〕 実働日数25日(S56.10.30~56.11.26)

売上額(A) 7,071,873

仕入額(B) 5,747,957

経費額(C) 837,436

利益額(D) A-(B+C) 486,480

D÷25=19,459

(2) 1月の純利益 486,480

〔計算〕 19,459×25=486,480

4. 保土ヶ谷税務署分

(1) 1日の純利益 102,266

〔計算〕 実働日数35日(S56.10.18~56.11.26)

売上額(A) 30,019,165

仕入額(B) 24,365,635

経費額(C) 2,074,186

利益額(D) A-(B+C)3,579,344

D÷35=102,266

(2) 1月の純利益 2,556,674

〔計算〕102,266×25=2,556,674

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